◆あらすじ（台本） 神官ランフィスがエチオピア遠征の指揮官を神が指名したと言う。 エジプトの奴隷のアイーダはエジプトの王女であり、エジプトの将軍ラダメスと密かに互いに思いをよせていた。 ラダメスは遠征軍の指揮官に選ばれることを願っている。ファラオの娘、王女アムネリスもラダメスを思っている が、ラダメスとアイーダが愛し合っているのではと疑念を持っている。 神官は神がラダメスを指名したとし、彼は遠征に行く。 エジプト軍が勝利し、凱旋してくるが、アムネリスはアイーダの気持ちを知るため、ラダメスが死んだとアイー ダに嘘をつく。 凱旋したエジプト軍が連れてきた中に、アイーダの父、エチオピア王のアモナズロがいる。 ラダメスの望みでアモナズロ以外の捕虜は釈放され、ファラオは娘アムネリスをラダメスと結婚させることを褒美 として告げ、二人は落胆する。 アモナズロはアイーダにエジプト軍の通り道をラダメスから聞き出すよう迫り、アイーダはラダメスに一緒に逃げ るよう誘惑し、エジプト軍に見つからないで帰国できる道を尋ねる。 ナパタには軍がいない事を告げたラダメスの前に、アモナズロが現れ、自分がエチオピアの王である事を告げる。 しかし、婚礼の祈祷から出てきたアムネリスとランフィスに見つかり、ラダメスはアモナズロとアイーダを逃がし、 自分は残る。 ラダメスは裁きを受け、地下牢に生き埋めになることになる。 地下牢に入れられたラダメスは、先に忍び込んでいたアイーダと再開し、死を迎える。 ◆作品の由来 1869年、スエズ運河開通記念に建立された、カイロ・オペラハウスのこけら落としの為に作られたもの。 ただし、実際は間に合わず、ヴェルディの「リゴレット」が上演された。 原作となる作品は、依頼を受けたエジプト考古局局長Ｏ．マリエット（*）によって書かれたレポート。 マリエットは２５王朝（クシュ）、２６王朝（エジプト）を作品の舞台背景に選んでいる。 ◆舞台背景の25王朝と26王朝 この時代は、末期王朝時代でツタンカーメンに代表される新王朝時代の輝かしい状況ではない。 この時期は、エジプトは混乱期でいくつもの王朝が乱立していた（日本の戦国時代状況） 代表的な第22と23王朝（B.C.954-715）はリビア人により王朝で、第25王朝とされる、ナイル上流のクシュ王国が リビア王朝などの異民族を駆逐し、エジプトを再統一した。B.C.667年、アッシリア王アッシュールバニパルが エジプトに侵攻、25王朝のタハルカ王はクシュに戻ってしまう。 その後、サイスに第26王朝を樹立したプサメチコスによって、アッシリアを撃退し、再びエジプト人の王朝に 戻るが、B.C.525年アカイメネス朝ペルシアのカンビュセス王によって征服される。この後、エジプトは度重なる ペルシア支配を経て、B.C.332年にアレクサンダー大王によって征服され、エジプト人による王朝は途絶える。 （クレオパトラ7世でおなじみのプトレマイオス王朝は、マケドニア人王朝です。マケドニア・・・って何処かな と思っていたら、ユーゴスラビア解体で、復活しました。南欧ですね） ◆エチオピアとクシュ王国 エチオピアというのは現在のエチオピア王国ではありません。 古代ギリシア人はナイル上流周辺をそう呼んでいたそうです。（尚、エジプトの地名、テーベなどもギリシア語 だったりします。ヘロドトスの影響がやはり大きいです） クシュ王国はヌビアにあり、ヌビアとはダムで有名なナイル川沿いのアスワンから現在のスーダンの首都ハラツー ム付近を指すそうです。 尚、クシュ王国の首都はナパタで、その後やや上流のメロエに移ります。 ◆クシュ王国（アイーダではエチオピア）の首都がナパタ？ ナパタは軍事拠点であり、エジプト兵が駐屯していた時代もありました。しかし、上記に書いたように、混乱期 で、エジプト統一も出来なかった当時はそこはエジプトの地ではなかったのです。 クシュ自体もB.C.900年代に突然強力な国家となり歴史上に現れ（旧約聖書にもカシュという名で出てきます）、 当時は恐らく、本家（あの辺り一体は何度もエジプト領になった）より繁栄していたと思われます。 ヘロドトスの「歴史」には、新首都メロエの繁栄ぶりが記されています。 ◆4000年変わらないエジプト 絢爛豪華な舞台装置からすると、あくまで舞台美術は新王国時代をモチーフとしているようです。 といっても、エジプトは極端に変わることが無かったため、どの時代といっても通じてしまうところがあります。 （日本だったら、4000年・・・弥生時代から現代の間に、服や髪型も随分変わってますがね。） エジプトは（壁画などがあるから）資料に事欠かないのでしょうが、エチオピア（クシュ）に関しては資料が 乏しい（実際にBritsh Museum Dicionary of Ancient Egypt にも、宗教、住居など未調査のため不明と書いて あります。 ◆正しい？古代エジプトを背景とする舞台装置のありかた（←言い過ぎ） 衣装・・・古王国時代であれば、女性は体にフィットしたフルボディコンの服（チュニック）。服は胸の下から 足首まで。肩紐は時代によて太さが変わるものの、片側、幅広で胸を覆うものなど。 新王国以降であると、透かし織のカラシリス（貫頭衣らしい）、ドレーパリー（巻き衣）。 男性は腰巻布（シャンティ）で、新王国以降貴族の間はカラシリスか膝下まであるシャンティ。 髪型・・・古代エジプト人はそのほとんどが鬘で、地毛は男性は剃ったり、刈り込んでおく事が多く、女性も 短く刈り込んでしまうのが普通。これは貴族のみならず、労働層もです。 鬘は黒いストレートヘアーというのは珍しく、壁画などをみても分かるように細かい巻き毛が多く、 又茶髪(笑)の鬘も出土している。地毛自体もヘンナ（赤い色素）で染めていることもあるそうです。 エジプトは乾燥しているため、鬘や衣装は割と出土しています。（B.C.2800年頃の服まで出土している） ツタンカーメンの出土品には、（鍋つかみのような）手袋もあります。 王宮と神殿・・石造りの神殿は現在まで残っていますが、泥レンガ作りの王宮は残骸としてしか出ていません。 この為、現存する神殿をモデルに王宮を創ってしまうようです。 この時の最大の過ちは、柱などを現存の状態（砂色）にしてしまうこと。本来は極彩色に着色された ものです。（とは言っても、日本の場合の創建当時の奈良の大仏が金きらきんだったなんて想像でき ませんが） 尚、王宮の壁画は神像などではなく、幾何学模様や、鳥や植物などであったようです。 ご参考までに化粧法 アイライン・・・コールというものです。（博物館でコールポットがあれば、アイライナー入れ） 基本的に、孔雀石を粉末にした緑のもの（古王国時代まで）、その後は方鉛鉱による黒いラインに なります。 尚、クレオパトラは上を黒、下を緑にしていたそうです。【閲覧の記録】 2000.09.24 アイーダ ボリショイ・オペラ モスクワ・ボリショイ劇場 2002.05.02 アイーダ ボリショイ・オペラ モスクワ・ボリショイ劇場（リンク貼ってませんが、バレエの2002年部分のその他に短く書いています） 2002.05.03 ファラオの娘 ボリショイ劇場 2003.09.23 アイーダ 新国立劇場 2003.10.05 宝塚 星組 王家に捧ぐ歌 東京宝塚劇場 詳細版 2004.06. 劇団四季 アイーダ
ボリショイのアイーダのバレエシーン 
テーベ・ネムアメン墓壁画
第18王朝(B.C.1400年頃） 大英博物館蔵*オースギュスト・マリオット（1821-1881） フランス、ブローニュ生。 フランス語教師としてイギリスなどで働き、親類の古代エジプト研究者 N.ロートの没後その資料を渡され、独学で古代エジプトを勉強する。 学術雑誌に論文を発表し、ルーブル美術館職員に採用される。 1850年エジプトに派遣され、セラピウムなどを発掘し、発掘品をルーブルに 持ち帰る。 1857年再度エジプトを訪問し、副王サイド・パシャにエジプト考古局の整備 を進言し、初代局長に任命される。 1881年カイロにて死去、墓はカイロ博物館にある。
